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旅行・食べ物・音楽・映画などの覚書き。ワンコ生活もスタート。                        


by Melissa N.
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あらためて、手塚治虫。

DVDが故障していた(と思い込んでいた・・・。)間、
DVD鑑賞に割いていた時間を、違うことにあてると、
色々はかどる、はかどる。(どんだけ~DVD見てるのだろう?)
そのうち一番時間がかかったのが、これ。
あらためて、手塚治虫。_d0106242_10393370.jpg

「20世紀少年」+「21世紀少年」を読んでいた時、知り合いの編集長が、
「こっちの方がお勧めだけど・・・。」と送ってもらった「プルート」。
シリアスなテーマに息が詰まりそうになりながら、でも感動した。

この原作が、手塚治虫の「地上最大のロボット」だと知って、ふと全作読んでみたくなり、
コミックレンタル初挑戦。
(読みたいと思った翌日に全巻揃うなんて、世の中便利になったものだ。)
とはいえ、30年以上も続いた漫画、簡単には読み終わらなかった。



読めば読むほど、小さい頃の記憶が戻り、今と全然違う感想を持っていたことに驚く。

「鉄腕アトム」というより「リボンの騎士」や「ジャングル大帝」のファンだった私には、
円熟期を越えてしまったアトムに魅力を感じなかった。
外観とは裏腹に、子供らしくないストーリーもなじめなかったのだろう。

しかし、今、手塚の偉大さに改めて感動を覚える。
あの時代に、漫画で、ここまで辛辣に社会批判をしていたなんて。
将来をここまで直視出来た人間がいたのだろうか・・・。

アトムの誕生日(2003年)を過ぎた現在、手塚が想像していたほど科学技術は
進歩していないかもしれない。しかし、彼が危惧していた問題は解決されるどころか、
更に深刻化している。手塚が良く描いていたシーンを挙げると・・・

人間の自分勝手な行動が地球を破滅させようとしている。
宇宙人がそんな人類を滅ぼそうとする設定は、「地球が静止する日」を髣髴とさせる。

自分の意見を持たず、目立つ意見に迎合してしまうため、すぐに間違った方向に進む。
一つの事件をきっかけにすぐ暴動がおきたり、刑事や博士ですら、アトムを信じなかったり。
手塚の表現は極端かもしれないが、民主党大勝利の今夏、同じようなことが
起きているのを目の当たりにし、日本人の浅はかさを感じた。

うまく行かないと、すぐ他人のせいにする。
「アトム」では、何でもかんでもロボットのせいになる。原因は人間にあるのに。
だれの心にも「ヒトラー」がいるんだと感じさせる。

殺せば、あるいは破壊すれば、それで一件落着だと思う。
アトムは最初話し合いを持とうとするのだが、結局最後は破壊してしまう。
それも、人間に命じられてすることで、彼自身は望んでいない。
マニフェストを実行するために既存の仕事を全て中止するというのも、
どことなく共通している気がして、恐ろしい。
既存のものを全て悪と決め付けるその姿勢、私には納得がいかない。

彼の漫画には、子供向けとは思えないほど、残忍な大人が登場し、善人が殺され、
必ずしもハッピーエンドにはならない。手塚は世間の批判を浴びつつ、
苦悩しながら描き続けていたようだ。しかし、現実社会はもっとむごい。

10月にハリウッド版「アトム」(Astro Boy)が公開される。
登場人物がみんなアメリカ人になって、原作からは程遠い。
内容までハリウッド化しているのだろうから、期待は持てない。
by melissan | 2009-09-18 08:29 | 映画