「9日目~ヒトラーに捧げる祈り~」は、これまた数奇な運命を描いた映画。
強制収容所から突然ルクセンブルグへ帰国を許された神父クレーマー。
しかし、実は彼には、9日間の間に大司教を説得し、
ナチスドイツに協力させるという任務が課せられていた。
収容所の同胞はもちろん、彼の家族にも命の危険が及ぶ中、
神の意志を貫くべきか、葛藤する。
今回、ドイツ将校が、微妙な立ち位置にあり、登場人物一人一人が
苦悩する姿に胸が痛んだ。
ラストにちょっと隠し球を仕掛けてあって、悲しいけれど、
にやっとさせてもらった。
特に女性が主役の映画で、往年の大女優や新人女優の素晴らしさが光ったもの5つ。
「クロワッサンで朝食を」
原語のタイトルは、"Une Estonienne a Paris"(パリのエストニア人)。
パリに住むエストニア人女性二人の話。
ジャンヌ・モローが偏屈な老婆役で、ライネ・マギも、落ち着いた演技で見事。
切ないストーリー展開だが、最後に少しほっとできたのが救い。
「死刑台のエレベーター」のジャンヌしか覚えていない私だが、
年をとっても、にじみ出る品の良さと、円熟した演技力で、圧倒された。
「はじまりは5つ星ホテルから」
マルゲリータ・ブイ、見たことあるなぁと思ったけれど、
彼女の映画はこれが初だった。(何故?)
世界の高級ホテルが7つも出てきて、それだけでも十分満足♪だが、
覆面調査員って、こんなことしてるのね〜と、興味深かった。
高級ホテルに泊まり歩いて、羨ましいと思うけれど、旅先では常に一人で、
私生活も落ち着かない。大変な仕事なんだなぁ。
私も、海外旅行の添乗員をしていた時は、
一人になりたいと思いつつも、一人になると無性に寂しかったのを思い出した。
ぱっとしない題材を、見事にまとめた監督とマルゲリータの技に乾杯!
「ハンナ・アーレント」
アメリカに亡命したドイツ系ユダヤ人哲学者のハンナは、
戦後、ナチス戦犯の裁判を傍聴し、レポートを書く。
それが、世界中から激しい非難を浴びる。
戦犯の罪を「悪の凡庸さ」故と言い切るのは、かなりの勇気が要ったことだろう。
考え続ける彼女の顔が、台詞はなくとも、心に響いた。
これは、バルバラ・スコヴァの熱演によるものだろう。
彼女のような、信念を持った生き方を貫くには、常に真実を見極める目が大事だ。
えてして曇りがちになる私の目を、この映画はクリアにしてくれた。
「8月の家族たち」
メリルストリープ、ジュリアロバーツ、サムシェパード、ベネディクトカンバーパッチ・・・と、
そうそうたる俳優が名を連ねているのだが、
以前観た「幸せの帰る場所」に似たストーリーなので、あまり期待していなかった。
ところが!!!
家族の心情を見事に描いていて、と〜っても共感してしまった。
夫の葬式後の食事シーンは、メリルとジュリアの迫真の演技で、鳥肌が立った。
こういう感情、監督も女優たちも、どうして分かるのだろう。
私だけだと思っていたのに。。。。(ちょっとほっとしたりして。)
はっきりした結論は出なかったが、決して暗いエンディングではなかった。
「タイピスト!」
ただただ、デボラ・フランソワがキュート♡
ストーリーはマイフェアレディのフランス版と言う感じだが、
デボラが、ただかわいいだけではなくて、
芯の通った、素敵な女性に成長して行くのを、見事に演じている。
ファッションもたまらなくキュート。
このタイプライター、懐かしい。
入社前にタイピングスクールに通わされたのを思い出したが、
歳がバレるから、とても人には言えないなぁ。(あっ、言っちゃった。)

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ここのところ、娘の「復習」につきあって、
007シリーズや、黒澤明作品などを観て、食傷気味だったけれど、
久しぶりに自分の観たいものを観た。
エル・ブリ。
2011年、衝撃の閉店をしてしまい、
まぁ、元から縁はなかっただろうけれど、
これで一生味わえなくなってしまったと思っていたら、
映画があるとは!
半年間の休業の間に、200種類もの新作を編み出す過程が観られて、感激。
まるで科学の実験のような試行錯誤の毎日。
時に怒り、時に笑い、偶然から生まれる味もあり、
4人の助手とともにメニューを作り上げて行く過程を観てしまうと、
食べに行かなくても良いかなと思うくらい、お腹いっぱいに。
フェラン氏は、エル・ブリ閉店後、料理研究財団を発足し、
2014年から、研究成果を無料配信すると言う。
毎年、驚きの料理を作り上げて来た彼が、
新たなクリエーターたちと、どんな配信をしてくれるのか、
今からとても楽しみだ。


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確かに、ダニエル・デイ・ルイス、見かけも、暗い表情も、しぐさも、
私達のリンカーン像そのもの。
実在の人物を描いた映画が、色々浮かんだが、
「リンカーン」は、その中でもかなり良い映画だった。
アメリカ史をもっと理解していれば、より楽しめるはずだが。
ふと思い浮かべただけで、実在の人物の映画は、いっぱいある。
中でも、私のイメージにあっていたのは、
「終着駅」のトルストイ。
写真でしか見たことのない文豪だが、
悪妻と言われた奥様との関係は、
きっとこうであったはず、こうあってほしいという、
私達の希望がそのまま映像になった感じ。
悪妻役のヘレン・ミランは、
「クイーン」でエリザベス女王も演じているが、そっくり。
現役の人を演じるのって、勇気いるだろうな。
でも、とても堂々と演じていて、さすが。
現役といえば、メリルストリープは、
「マーガレット・サッチャー」でサッチャーを、
「ジュリー&ジュリア」ではジュリア・チャイルドを、
演じていて、ともによく似ているのだが、
メリルストリープらしさも残っていて、どちらもチャーミング。
やはり、名女優は、すごい。
他にも、実在の人物を描いた映画で、私のイメージにぴったりだったのは、
「ヒトラー、最後の12日間」のアドルフ・ヒトラー(ブルーノ・ガンツ)、
「翼よ、あれが巴里の灯だ」のリンドバーグ(ジェイムス・スチュアート)、
「ガンジー」のガンジー(ベン・キングスレー)、
「ブッシュ」のブッシュ(ジョシュ・ブローリン)、
「モーターサイクルダイヤリー」と「チェ」のチェ・ゲバラ(ガエル・ガルシア・ベルナール)、
「カポーティ」のトルーマン・カポーティ(フィリップ・シーモア・ホフマン)
「Ray」のレイ・チャールズ(ジェイミー・フォックス)
などなど。
確かにイメージに近いけれど、ちょっとtoo muchに感じたのは、
「アビエイター」のハワード・ヒューズ、「J・エドガー」のエドガー、
と言う個性的な二人を演じたレオナルド・ディカプリオ、
「エリザベス」と「ゴールデンエイジ」でエリザベス1世、
「I'm not there」でボブディラン(女性なのに違和感なかった!)
を演じたケイト・ブランシェット、
「アマデウス」のモーツアルト(トム・ハルス)、
「クレオパトラ」のクレオパトラ(エリザベス・テイラー)、
などなど。
それらに対して、実在の人物のイメージダウンになったと思ったのは次の2作。
「レオニー」は、イザムノグチ以外まったく知らなかったので、比較のしようがないが、レオニーさんには、あまり共感を持てなかった。描き方によっては、芯の強い女性となるのだろうが、ただのわがままな、世間知らずの女性で終わってしまい、もったいない気がした。
「ゲーテの恋」のゲーテにも、失望。。。
もしこの映画が事実なら、ゲーテは但のおぼっちゃま?!
信念があったわけでもなく、父の臑をかじるだけのゲーテが、
不倫相手のお陰で有名になり、父との関係も元通りなんて。。。
実在の人物を演じると言うのは、有名無名に関わらず、大変だと思う。
でも、大衆向け映画なのだから、今回の「リンカーン」のように、
イメージを崩さず、しかもその人の一生から何かを学び取れるような、
意味のある映画を観たいものである。


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「あなたと話せて良かった。
あなたは、sympathyよりempathyを感じてくれたもの。」
同情より共感。
自分では、英語力のなさで、慰めようにも、うまく言えず、
もどかしかったのだけれど、
彼女の気持ちが、すっと自分の気持ちとかぶったのは感じた。
確かに言い得ている。と思った。
先月、日本滞在中に、友人から、電話をもらった。
お互いに励ますつもりが、号泣しながら、お互いの体験を語り合った。
先週、約一年ぶりにお会いしたお知り合いとも、
泣きながら、お互いの体験を語り合った。
一方的に話しているようでいて、不思議と話すほどに心が落ち着いていく。
「共感している」と実感した。
ようやく、心の準備ができたと思い、
「愛、アムール」を観た。
(どうやってと言うところは、まぁ、良いとして。。。汗)
これぞ、まさしく、昨年、私と、両親が体験したこと。
両親と私の気持ちを、これほど的確に表現してくれるなんて。
感謝。
「私一人でできる。そっとしておいてくれ。」と言うジョルジュと違い、
父は「一人ではできない。助けてくれ。」と言ったので、
映画とは多少異なるが、多くの部分が当時とかぶった。
退院後、私がジャカルタに帰っている間の両親は、
まさにジョルジュとアンヌのようだったのだろう。
30キロも体重の減った母でさえ、ベッドからトイレに移動させるだけでも一苦労。
家事をしたことのない父が、家事一切を任され、その上看護もし、パニックになる。
なんとか元気にしたいと空回りする父と、
自分の体が思い通りにならない苛立たしさに、わがままを言う母。
それでも、映画の結末と違うのは、
父は、最後まであきらめなかった。
母は、最後まで意識があり、笑顔を見せてくれた。
そして、娘である私も、両親とともに過ごす時間が持てた。
他人が「こうすべきだ」と言うのは容易い。
看護師やヘルパー、娘ですら、映画と同様、実生活でも、役に立たない。
しかし、愛し合ってきた夫婦は、
言葉に出さずとも、お互いをいたわり合い、尊重し合う。
それが、この映画の結末につながる。それもありだと思う。
実は最近、sympathyによって傷つけられたばかりだったのだが、
(決して悪気があった訳ではなく、未体験故の無知から出た言葉だと信じたい)
一人の友人と一つの映画で、empathyを感じることができ、
ようやく気持ちが晴れた。


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我が家から通いやすいIMaxシアターは3つ。
そのうち、ガンダリアシティに入っているシネマXXIに。
さすが、スハルト系だけあって、(前大統領スハルトさんのご家族が経営)
高級感がある。
世界共通の高画質映像が、優雅な映画館で、並ばずに、
しかも日本で観るお値段の半額以下で、
観られるなんて、お得感いっぱい♪

待ちかねていた「Hobbit」を観に。
私がよく行くBlitzmegaplexと違い、
初演から2日目にして、閑散とした有様。
インドネシア人には人気ないか〜。。。
しかし、中に入ってみれば、まぁまぁの客入り。
(今まで、あれだけ混雑しているBlitxmegaplexですら、
満席と言うことは一度もなかった。)
映画の間、ふだんは静か〜な劇場も、
(感情を表に出しちゃいけないのか?と思うほど)
今回は笑い声が結構あり、場内の雰囲気も盛り上がっていた。
3Dで観る映像はすばらしく、2時間50分があっという間だった。
”「ロードオブザリング」の前作”の色が濃く、
いろいろなシーンが「なるほど、それで。。。」と
つながるように作られているが、
原作は”全く別の話”という印象だったので、もう一度読み直してみなければ。。。
先日、前立腺がんを6、7年患っているが治療を受けていないと告白した
イアン・マッケランが、3部作すべてを演じ切ってくれることを願う。
彼以外のガンダルフは、想像できないから。

ランチを食べそびれた私の目に飛び込んできたので、
衝動買いしたエッグタルト。
定番ポルトガル風が一番美味しかったけど、
チーズも、アーモンドも、チョコも、それぞれおいしかった。
これから、ガンダリアに行ったら、必ず買っちゃうかも。


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この9月から参加しているIHS (Indonesian Heritage Society)の上映会。
今夏話題だったインドネシア映画に、英語のキャプションをつけてくれた。
たった一回限りの上映会だったので、万障繰り合わせの上(おおげさ。。。)参加。
ラッフルもあって、この収益は、Lontar Foundationに寄付される。
1965年9月30日事件当時の、ジャワ島中部の田舎の話。
小作農ばかりの貧しい村で、
たった一人選ばれる「ronggeng dancer」の存在は、大きい。
踊りが好きで好きで、恋人を捨ててまで、その踊り子になったSrintil。
Srintiが踊り子になった夜、村を出て、軍隊に加わったRasus。
時代は共産党が勢力を増している頃で、
こんな田舎にも、党員がやってきて、Srintilを利用して
字も読めない村人を、全員共産党員にしてしまう。
一方、軍の幹部に気に入られたRasusは、
文字を習い、厳しい訓練を受け、りっぱな軍人へと変わって行く。
そして、1965年の9月30日事件が起きる。
村人は、全員、何の罪かもわからないまま、軍人たちに虐殺されて行く。
さて、二人の運命は。。。
と、まとめてしまうとわかりやすいのだが、
やはりまだまだ未熟な作りだからか、非常にわかりづらい。
主人公たちの心情描写も今ひとつ。
ヒンズー教の慣習も、ムラの意識も、西洋人には理解できないだろうなぁ。

最後に、監督のIfaさんと、主演男優のOkaさんが、
挨拶をかねて、質問に答えてくれた。
Okaさんは、誠実そうで、英語も堪能で、知的な雰囲気がある。
(さすがセレブ)
次回作は、日イ合作映画「Killers」に出演。
北村一輝と共演しているが、内容が内容なだけに、
あまり期待できない。。。残念。
監督のIfaさんは「98年世代」。
インドネシア民主化のため学生運動をしていた世代で、
現在の映画界を支えている。
「前へ進むために過去を知りたい」と、
インドネシアの暗い過去を映画にして発表し続けている。
都合の悪い部分を目隠しされて育った私達は、彼らとほぼ同世代。
過去に触れずにきたせいで、今になって領土問題、慰安婦問題と、
様々な問題が噴出している日本。
彼らの「真実への探究心」、私の心に突き刺さった。


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